すっかり夏らしくなり浴衣を着るのが楽しい季節になりました。
ところが、浴衣を着てずっと立っているうちにだんだん腰がつらくなってしまうという人が少なくないようです。
いったいどうしてなのでしょうか。調べてみると、ちゃんと理由がありそうですよ。
浴衣/着物を着ると背筋が伸びる
腰が痛くなると姿勢が悪いのではないかと心配になってしまいます。
現に、最近の日本人は昔の人に比べて姿勢が悪いということはよく言われています。
昔撮られた白黒写真を見てみると、大半の人は背筋がピンと伸びて着物姿がとても様になっているものです。
ところが、どうやら昔の日本人の姿勢がいいのは生活習慣に理由がありそうですよ。
まず、浴衣を着るために帯を締めると、腰が圧迫されるので背筋が自然と伸びてきます。
これは浴衣を着たことがある人なら実感したことがあるはずです。
さらに着物を着て腰を固定したまま正座をすると、骨盤の上に脊椎がしっかり乗ってくれるのでとても良い姿勢を比較的楽に維持することができることにも気がつきます。
ギックリ腰で病院に行くと医療用のコルセットを処方してくれることがありますが、浴衣の帯がまるでコルセットのような役目を果たしてくれるようです。
ですから、普段は腰痛に悩まされていても、浴衣や着物を着て帯を締めると腰が楽になるという人もいるようです。
帯を締めることで姿勢が良くなるのですから、まだわかる話です。
そういう人からしたら、浴衣を着ることでかえって腰が痛くなるなんて、少し信じられないことかもしれません。
いったいどうして腰が痛くなってしまうのでしょうか。
腰が反りすぎているのかもしれません
その理由もやっぱり姿勢にありそうです。
ヒントになるのは腰ではなくて足の先。
着物を着ているときは、摺り足のようにして足先から着地するのが作法だと聞いたことはありませんか。
思い返して見れば、各地に伝わる盆踊りもしっかり足先から着地しています。
ところが、これは現代の常識とは少し違います。
現代では、足腰の負担を減らすために背筋を伸ばしてかかと着地をするのがいいでしょう、ということはこのコラムでも何度か紹介しています。
足先から着地すると、どういうわけか腰が曲がって猫背がちの姿勢になってしまうのです。
これはあくまで推察ですが、昔の人はどちらかといえば猫背気味だったと考えられます。
少しぐらいもともとの姿勢が猫背でも、腰を帯が固めてくれていますから着物を着ればちゃんと姿勢良く見えるのです。
一方、現代ではウエストラインを強調するために、腰を反らすことが癖になっている人を良く見かけます。
洋服文化では、強調された腰のラインは女性らしさの象徴ですし、その方が見た目には姿勢が良く見えます。
もともと反り腰の癖が付いている人が帯で腰を固めてしまうと、だんだん腰が苦しくなって着てしまうことが想像できます。
浴衣を着ているときの自分の腰が反りすぎているかどうかを確かめるのは簡単です。
一旦帯を緩めて前かがみになってみましょう。
腰のつらさがずいぶん楽になれば、あなたの腰はきっと反りすぎの傾向があるはずです。
締めすぎないような工夫を
ここまでの内容をまとめると、良い姿勢を維持しようという意識が強い人ほど腰が反りすぎて、浴衣の帯を締めたときにかえって腰が苦しくなってしまう傾向があると考えられます。
ですから、もし思い当たる節があるのなら、浴衣を着ている最中はあまり肩肘張って良い姿勢を維持しようとするのをやめてみてください。
浴衣はもともと身体の凹凸が出にくい衣服です。
ウエストラインを強調するような着こなしにはあまり適していません。
また、どちらかといえば痩せ型の人が浴衣を着ている間に腰痛を感じやすいようです。
痩せている人は帯をきつく締めてしまう傾向があるからです。
ですから、ウエストにタオルを巻いて補正をしてみましょう。
あまりきつく巻きすぎないことも楽に着こなすポイントです。