私たち歩きを支える下半身。
「外反母趾」「偏平足」「膝の痛み」など、案外いろいろなトラブルに見舞われやすい部分です。
どのトラブルも「O脚」、「X脚」、「すり足」など歩き方や足の使い方に深く関係しているといわれていますが、自分の歩き方はなかなか客観的に把握できないのが難しいところ。
人の歩き方のクセにはすぐ気づいても、自分のクセには気が付きにくいのがトラブルを悪化させてしまう一つの原因になっているのではないでしょうか。
そんな自分のクセも、靴底の減り方を見れば一目瞭然。
だれでも簡単に判断できる、靴の減りの見方を解説します。
靴底は歩き方のクセを映し出す

最近注目されているように、「歩く」ことはすべての運動の基本的な動作で、健康を保つためにも必要不可欠な運動です。
毎日歩くことはメタボリックシンドロームを予防し、動脈硬化や糖尿病のリスクを下げることも知られています。
欧米に比べ肥満が少ないといわれてきた日本でも2010年代にはBMIが25以上の肥満の人が人口の3割程度に上り、これが糖尿病などの生活習慣病が増加している大きな要因だと考えられています。
毎日のウォーキングは健康長寿社会を実現するための大切なキーポイントなのです。
しかし、間違った歩き方を続けていると膝や足首、さらには腰にとって負担が蓄積することになり、結果的に体を傷めることにつながりかねません。
長く、いつまでも健康に過ごすためにも、体の仕組みを上手に使った正しいウォーキングフォームを身に着ける必要があるといえます。
では、体への負担が少ない正しいフォームとはどのようなところに気を付ければいいのでしょうか。
ポイントになるのは体重移動のやり方です。
ウォーキングではかかとから着地し、足裏の全体で地面をとらえ、つま先を使って地面をけり出すという一連の流れがスムーズに行えているかどうか、ということが最も大切です。

このバランスが崩れて、独特の歩き方、つまりクセがあると外反母趾・扁平足といった足の変形や痛みを引き起こしやすくなります。
こうした体重移動のクセは靴底の減り方を比較することですぐにわかります。
靴底は歩き方を映し出す鏡だといえるのです。
「靴底の減り方チェック」ポイントはつま先とかかと
まずは下の2足の靴底をを見てください。

2足の靴底の減り方の違いはどこにあるでしょうか?
少し写真が不鮮明でわかりづらいかもしれませんが、左の靴底は親指の部分とかかとにそれぞれ減っているのに対して、右の靴底はかかと部分しか減っていません。
この2足では、左は減り方のバランスが良い例で、右はバランスが悪い例ということになります。
靴底の減り方には大きく分けて、①かかととつま先が同時に減っていく理想的な減り方、②つま先が減る「先減り」、③かかとが減る「後減り」、④内側や外側が減る「内減り」「外減り」が挙げられます。
こうした減り方の特徴によって、歩き方のクセや起こりやすい足の疾患を知るための目安にすることができるのです。
①理想的な減り方

かかとから着地して、つま先を使って地面を蹴り出す歩き方ができているとこのような減り方になります。
かかとの減り方は真後ろ寄りなほど、またつま先の減り方は親指の付け根に近いほど理想的な歩き方ができている証拠です。
このような減り方を目指しましょう。
このほか、全体的にまんべんなく減っている状態も理想的な減り方です。
②先減り

靴の前方が偏って減るのは、足がよく上がらずにすり足になっている場合で、脚力が落ちてきた高齢者や猫背気味の人に多いのが特徴です。
他にも、高いヒールを良く履く女性に多い減り方です。
膝が伸びきらず、猫背気味の歩き方をしていることが影響しているようです。
自分の意識よりも足が上がっていないことが多く、ちょっとした段差や何もないところでもつまづきやすくなるおそれがあります。
なるべく膝を高く上げて足を引き上げる力を養う必要があるでしょう。
〇後減り

靴のかかとが極端に減るのは、足先にうまく重心が乗せられず、蹴り出すように脚を前に出している歩き方をしているときです。
かかと部分にタコやマメができやすい他、ぬれた路面や積雪時に滑りやすいので転倒につながることがあります。
指先を使うことを意識し、足指でタオルを使うなどのトレーニングをするといいでしょう。
〇外減り

かかとの外側が早く減る人は、足の外側にばかり体重がかかっている状態で、O脚(がに股)の人の特徴です。
靴底が減った状態で歩き続けると膝や足首に大きな負担がかかりやすく、変形性膝関節症の原因にもなります。
歩き方を見直すとともに、小まめに靴を買い替えましょう。
膝とつま先がまっすぐ正面を向くようにするとともに、親指を使ってしっかり地面をけり出すことを意識するようにしましょう。
〇内減り

X脚(内股)の人は靴底の内側が減っていきます。
足指部にタコやウオノメができやすい歩き方なので、意図的に内股歩きをしている人は脚の健康のためにはオススメしません。
また、放置すると重心が内側に偏ることで土踏まずのアーチが崩れ、扁平足や外反母趾を引き起こしやすくなります。
扁平足の矯正では、アーチを強化するインソールなどで対応する必要があります。
靴底をチェックしながら、負担の少ない歩き方を
体重移動の正しいバランスを身に着けると足のポテンシャルを最大限活かすことができるようなっていきます。
かかとの中心で柔らかく着地し、土踏まずを避けて足の外側に体重を移動させて、最後は足指をしっかり使って前にけり出すという一連の流れを一歩ずつ意識するようにしましょう。
さらに、もっとも不調が出やすい膝を傷めないために、着地のときには膝をまっすぐ伸ばし、衝撃を膝よりも上に逃がせるようにするといいでしょう。
その後、足の真上に上半身が乗るようにすると最も負担なく体を前に運ぶことができます。
歩くという動きは全ての動作の基本です。
ところが、歩き方というのはそもそも動作のクセが強く出やすく、それが将来の不調の原因になってしまうことも考えられます。
ただ歩くというよりも、正しい歩き方を身に着けながら実践することが足のケガ・疾患を予防する上で大切なポイントだといえるでしょう。
正しいウォーキングのポイント
〇着地はかかとの中心で。外側や内側から着地をしない
〇着地のとき、膝をまっすぐに伸ばす
〇着地したとき、上半身が足の真上に自然に乗るように意識する
〇つま先と膝が正面の同じ方向を向くようにする