強い季節風の影響で、例年北日本の日本海側の地域では背丈に迫るほどの雪が積もり、安全な通路を確保するためには雪かきが欠かせません。
ところが雪かきはかなりの重労働なので、ドカ雪が降った次の日には整骨院の予約がいっぱいになるなんていう話もあるほどです。
少しでも楽に、そして腰を痛めずに除雪するためにはどうすればいいのでしょうか。
今年初めて日本海側の冬を迎えるという雪かきビギナーでもコツをつかめるように、基礎から解説していきます。
雪かきはスポーツだと思ったほうが良い
雪かきをスポーツにしようという大会があります。
北海道小樽市で開催されている「国際スポーツ雪かき選手権」(2018年の開催は2/17)では、雪の塊をスコップやスノーダンプを使って運ぶ速さが競われます。
例年、体力自慢の若者が多数参加し汗を流していますが、参加した屈強そうな大学生も思わず「きつい」と弱音を漏らすほど。塊となった雪を切り出して運ぶ作業は体力が必要なのです。
実際、スコップを使った雪かきの運動強度はドッジボールやバドミントンよりも高いというデータがあり、外は氷点下でも雪かきをすれば汗をかきます。
そのため服装は防汗対策が欠かせません。
スポーツでも使える下着の上からフリースなどで防寒し、撥水性のあるレインウェアを合わせ、体感温度に合わせて脱ぎ着することで調節すると動き回っても快適です。
手はぬれるとかじかんで思うように作業できなくなるので、軍手の上からナイロン製の手袋を重ねてもいいですし、撥水性能の高いアウトドア用の手袋でも使い勝手がいいでしょう。
スポーツだと思えば、準備運動も欠かせないはずです。
雪かきは見た目以上に重労働で、急に重たい雪を運ぼうとして力むと心臓への負担が大きくなってしまいます。
外に出る前に身体を動かしておきたいものです。
雪かきの基本 ―傾向と対策-
雪かき中に体を痛めてしまう人も少なくありません。
正しい雪かきの普及をしているウィンターライフ推進協議会によると、とくに身体を痛めやすいタイミングは主に2つ。
1 雪を持ち上げるタイミング
スコップで切り出した雪を持ち上げるとき、腰から身体を屈めるのはNG。
前かがみの姿勢で重たいものを持ち上げると、脊柱にかかる負荷に偏りが生まれてヘルニアなどの原因になってしまうこともあります。
雪かき中は背筋を常に直立させることを意識させ、膝を曲げて腰の高さを落とすようにしましょう。
また、スノーダンプで雪を運ぶときにも、上半身に力を入れず、腰から進むのがポイントです。
2 雪を捨てるタイミング
身体をひねりながら雪を捨てるのはNG。
腰周りの筋肉に大きな負荷がかかって、ぎっくり腰や筋肉痛の原因になることもあります。
雪を捨てるときには腰をひねらず、雪を捨てる方向に向き直ってから正面に捨てましょう。
もしくは振り向かず、腕をうまく使って後方に捨てることでも腰にかかる負担を減らすことができます。
さらに初心者は足元にも常に気を配るようにしたいところです。
降雪後は一面真っ白になるため、見慣れた場所でも別世界のようになります。
危険な段差が埋もれて見えなくなってしまっていることもあるので、足元の安全は常に確保しながら除雪を進めていく必要があります。
屋根からの落雪に巻き込まれると自力では脱出できなくなってしまったり、最悪の場合意識を失ってしまったりして危険な状態に陥ることもあります。
できるだけ複数人で作業することも大切です。
ロープが1本あれば劇的に楽になる
膝を曲げて腰を落とす姿勢はリスクを軽減できる一方、足腰の持久力が必要。
慣れない人やお年寄りにとってはつらい姿勢です。
そこで役立つのが、膝を曲げずに足元の雪がすくえるスコップです。
柄が「く」の字に折れ曲がったこのスコップは、折れ曲がった部分をつかめば先が下まで届くようになっているので膝を曲げる必要がありません。
また、すでに柄がまっすぐなスコップを使っているという人に試して欲しいのが、柄の長さの1.3倍ほどの長さのロープを柄の下端と上端に結びつけるという方法。
ロープをつかめば先ほどの柄が曲がったスコップを再現できるという工夫です。
これなら、すでにあるスコップを使って楽に雪かきをすることができます。
雪かきは技術でカバーできる
慣れない人が雪かきをするとすぐにばててしまい、この冬を無事に乗り越えられるのか不安に駆られてしまうこともあるでしょう。
しかし、むやみに心配する必要はありません。
ある研究では、雪が降らない地域の若者と、雪深い地域に暮らすお年寄りとで雪かきに必要なショベリング投擲力を比べたところ、若者の方が筋力・パワーともに高いにもかかわらず、雪国に暮らすお年寄りの方が投擲能力は高かったという結果になっています。
技術を身につければ、より楽に雪かきができるようになるようです。
正しいやり方のコツをつかんで、腰を痛めずに冬を乗り切りましょう。