走り始めた人に最初にぶつかるのが、走った後にやってくる身体の痛み。
膝や足の裏の痛みが固定化されてしまうと成績が伸び悩むなど、その後のランナー人生を左右するような事態になってしまうかもしれません。
トラブルを最小限に抑えるために欠かせないのが走り終えた後に行うアフターケアです。
走りこみ、追い込んだ後の体は言わば身体の使い方の“クセ”が表に出てきた状態。
きちんと分析すればフォーム改善を図るチャンスにもなります。
ストレッチとトレーニングで膝の故障を防ぐ

太もも、ふくらはぎ、ハムストリングス、背筋……。
ランニングは全身を使った運動なので、疲労が溜まるポイントは意外と広範囲に及んでいます。
中でも身体の使い方のクセで負担がかかりやすい部位は、放っておくと引きつるように固まって故障のきっかけになることも。
フォームを確認しながら入念にケアをしていきましょう。
膝は多くのランナーにとって最も気を使う場所。
ペースを上げたり、距離を走りこんだりしたときに起こりやすいのが膝に関するトラブルです。
膝の故障を防ぐために欠かせないのが大腿四頭筋(太ももの前)の強化とハムストリングス(太ももの裏)のストレッチングです。
太ももの前後にある二つの筋肉は、膝を固定するように対になって一方が伸びれば一方が縮むようにできています。
ところが、大腿四頭筋が張る、あるいはハムストリングスが硬いという理由で上手く機能しなくなると、膝が不安定になってトラブルの引き金になってしまいます。
そこでランニングを終えた後は、まず大腿四頭筋の張りをとるストレッチや、ハムストリングスを柔らかくするストレッチを習慣化しましょう。
大腿四頭筋のストレッチは仰向けになって膝を折るようにします。
ハムストリングスのストレッチは、仰向けのまま片方のつま先にタオルを引っ掛けて、直角になるまで脚を曲げずに上げるようにします。
どちらも非常に重要なストレッチなので、ランニングが終わったら時間をあけずに行うようにするのがおすすめです。
走れない日や休養日には、ハムストリングスの柔軟と共に大腿四頭筋を鍛えるスクワットを取り入れるようにするとさらに効果的です。
筋肉は立体パズル
そもそも大腿四頭筋が張りやすいという人は、走っているときの姿勢に問題がある場合が多いようです。
腰が引けている、つまりフォームが猫背になっていると、重心が後ろに偏るので、大腿四頭筋は余計に頑張らないといけないのです。
そうすると、膝のトラブルを防ぐためには、まず腰が引けてしまうフォームを直すところから始めなければいけないことになります。
ですから、大腿四頭筋が張りやすいという人は背中の柔軟を取り入れて背中の筋肉を上手く使えるようにするということも必要なケアに入ってきます。
このようなケアはかなり回りくどいので、本当に必要なのかと感じてしまうかもしれません。
しかし、筋肉は骨を介して複雑に作用しあっているので、まるで巨大な立体パズルのようです。
しかも筋肉自体は自分では縮むことしかできない器官です。
全体のバランスを見ながら上手にコントロールして形を整えていくという意識はスポーツをやる上でとても大切なことだといえます。
立体パズルの考えに立つと、膝のトラブルを呼びやすいO脚やX脚を改善するために必要なケアも見えてきます。
まず、O脚は膝が外に向いてしまう状態ですが、その背景には大腿骨が外旋しやすいというクセがあります。
このため、あぐらをかくのは得意だけど、女の子座りは苦手だという人が多いはずです。
ハードルを内旋の動きでまたぐようなトレーニングで股関節を内に回す動作になれるようにしましょう。
反対に、X脚の状態は、大腿骨が内旋しやすいクセが背景にあります。
この場合、あぐらに苦手意識があるはずです。
ハードルを外旋の動きでまたぐようなトレーニングで股関節を外に回す動作になれるようにしましょう。
あぐらをかいて股割りをするのも効果的です。
ケガを防ぐには疲労回復も大切
力学的な話であれば、これまで紹介してきたように身体の使い方に気をつければいいということになりますが、トラブル予防にものを言うのが回復力です。
しなやかな筋肉を作るためには、活発な新陳代謝が欠かせません。運動後はもちろんたんぱく質が豊富なメニューを食べたいところですが、中でも筋肉を再構築するときにかかせないBCAAと呼ばれる必須アミノ酸を十分摂取できるメニューにするのがおすすめです。
BCAAは体内で作れないアミノ酸類ですが、筋肉の損傷を抑え、傷んだ筋肉を素早く回復させてくれます。
ですから、アミノ酸飲料も積極的に活用していきましょう。
また、最近では何かと目の敵にされがちな炭水化物ですが、ランナーが糖質制限するのはあまり良くありません。
というのも、筋肉のエネルギー源として真っ先に消費されるのは糖分で、不足すると今度はたんぱく質を分解し始めてしまう仕組みになっているからです。
とにかく、運動後はいろんなものを良く食べて身体の糧にすることが強い走りを作るポイントです。