―――今、Y字バランスが熱い!
女優の土屋太鳳さんや平祐奈さんなどの著名人が次々とインスタ上にY字バランス姿で記念撮影をする様子をアップし、すらっとまぶしい美脚にたくさんの「いいね!」が集まりました。
Y字バランスといえば身体が柔らかい、もしくは美脚であることの代名詞。思い返してみるとY字バランスを特技とするタレントやモデルはたくさんいますが、彼女たちは皆抜群のスタイルを誇っている印象があります。
それもそのはず、Y字バランスには誰であっても美脚に見せる秘密があるのです。
今回はY字バランスに秘められた驚くべき身体の仕組みと、身体が固い人でも実現させるためのコツをご紹介。
さあ、あなたもY字バランス美人を目指しましょう!
Y字バランスができるあの人が美脚に見えるのはなぜ?
実は今、開脚ブームのような状況が続いています。
『体がかたい人でもラクに開脚できるようになる本』や、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』がヒットを飛ばし、柔らかい身体を手に入れようと考える人が増えているのです。
中でもバレリーナやチアガールのようなY字バランスは、脚がすらっと長く見えるということもあり憧れの的。今はできないけど、いつか自分もできるようになりたいと思っている人は決して少なくないでしょう。
Y字バランスができる人が美脚に見えるのにはちゃんと理由があります。2つの理由をそれぞれ見てみましょう。
○Y字バランスで美脚に見える理由1 姿勢が良い
そもそも、Y字バランスができるようになるためには股関節を大きく広げられるようになる必要がありますが、骨盤を起こして股関節の可動域をうまく活用できていないと実現することができません。
猫背のように骨盤が前傾している状態では骨と骨がぶつかってしまうので、身体の構造的にできないようになっているのです。
つまり、Y字バランスができる人は“骨盤が起きていて”姿勢がとても良いということ。姿勢が良いからボディラインもすらっと伸びて見えるし、腰の位置が高くなるので脚が長く見えるというわけなのです。
○Y字バランスで美脚に見える理由2 筋肉にハリがある
Y字バランスができるようになるためには、姿勢だけではなく、当然筋肉の柔軟性がなければいけません。特にY字バランスではお尻と内ももの筋肉が重要で、ここが固くなっているとまずできません。
Y字バランスがスムーズにできる人はお尻と内ももの筋肉に柔軟性があり、ハリがあるため下半身のボディラインもシャープな印象を与えるということが考えられます。
つまり、(1)姿勢がとても良くて(2)筋肉のバランスも整っていなければきれいなY字バランスをすることはできないのです。Y字バランスを特技としているタレントの皆さんが美脚ぞろいである理由、納得していただけましたか?
美脚だけじゃない!Y字バランスのうれしいメリット
でも、Y字バランスに注目が集まっているは美脚効果だけが理由ではありません。実は、先ほど紹介した“開脚本”を購入する人の中には、かなりの割合で男性も含まれているのです。
実はY字バランスや開脚は、健康な身体を保つ基礎だといってもいいほど私たちの身体全体に大きな影響を与えているのです。繰り返しになりますが、脚を180度近くまで開くためには骨盤をしっかり立てて良い姿勢をとれるようになる必要があります。
ところが、座りっぱなしで仕事をすることが多いデスクワーカーの皆さんは股関節を動かす機会が極端に減っているため、骨盤の周辺の柔軟性が低下しています。
特に男性はホルモンの影響で関節が固くなりやすく、腰痛や股関節痛を引き起こす要因になってしまうこともあります。
股関節を重点的に動かすことができるY字バランスや開脚は、デスクワーカーの身体の不調対策としてももってこいのストレッチでもあるのです。
さらには姿勢が良くなることで呼吸が深くなる効果も期待できるなど、無視できない波及効果は身体全体に及んでいます。
具体的には腰痛や慢性的な疲れに悩まされている働き盛りの世代の人には、就寝前にY字バランスや開脚を練習するのがおすすめです。
昼間の仕事で固まっている股関節を十分にほぐしてあげることで血の巡りが良くなり、疲れが取れやすくなるためです。Y字バランスや開脚は、性別に関係なく身体を動かす機会の少ない人全てに実践して欲しいストレッチだといえます。
Y字バランスを目指すのなら、まずは床で「べったり開脚」を目指すべし!
ここからは実際にY字バランスを習得するための練習方法について解説していくことにしましょう。
いきなり立ってY字バランスをやってみてくださいといわれても、ほとんどの人は脚が上がりきらないのではないでしょうか。そこから脚をつかんでバランスをとるなんて、できるようになるイメージがまったくわかなくても無理はありません。
まず必要なのは、座った状態でY字バランスをするのに十分な開脚ができるようになることです。いきなり立った状態でやるのではなく、まずは床にペタリと座って開脚のトレーニングをするところから始めましょう。
さて、実際に床に腰を落として脚を広げてみましょう。おそらく多くの人は両脚を真横に広げることにえらく難儀するのではないでしょうか。膝を伸ばしきることさえしんどいと感じるかもしれません。
でも安心してください。
少しの練習を積みさえすれば、あなたの脚ももっと簡単に大きく開くことができるようになるはずです。ポイントは身体の使い方。開脚がうまくできない人は、そもそも脚の広げ方に対する考え方が「動かしにくい方向」へ間違っている可能性があるのです。まずは脚を広げる感覚をつかむために次のステップを試してみましょう。
Y字バランスの基礎練習1 女の子座りストレッチ
- 1 女の子座り(正座を崩した座り方)をする
- 2 つま先と膝がどちらも真上を向くように意識しながら、片脚を真横に広げていく
- 3 膝を床に押し付けるように力を入れて、脚全体をピンッと伸ばす
- 4 もう片脚も同じように伸ばす
ただなんとなく開脚をするだけよりも、上のような方法をとることで少しスムーズに脚を広げることができるようになります。両脚を同時に広げることはまだできないかもしれませんが、片脚を広げることは難なくできるはずです。
このステップで大切なのが、膝を外側に開くこと。実は股関節は内股の状態だとあまり広がらないようになっています。その証拠に、両脚を同時に広げてみると、広がらないという人は膝が内側を向いてしまっているはず。大きく開きたいときには意識してガニ股の形を作る必要があるのです。ガニ股の形を練習するために、続けて次のステップもやってみましょう。
○Y字バランスの基礎練習2 股関節ほぐし
- 1 膝を曲げたままでいいので、両脚を同時にできるだけ大きく開く
- 2 股関節を内側から外側に回して、膝の外側とくるぶしの外側を床に近づける動作を繰り返す
- 3 30回ぐらい繰り返したら、両脚を広げて膝をできるだけ伸ばす
膝を伸ばした状態でもガニ股を維持できるようになれば、かなり開脚できるようになるはずです。膝を完全に床に押し付けられるようになればガニ股トレーニングは一旦完了です。1日や2日でできるようになるものではありませんが、前章でも紹介した通り、開脚はそれ自体が腰を緩めるいいストレッチになるので、毎日続けてみて欲しいと思います。
ガニ股と同じぐらい大切なのが“骨盤を起こす”ことです。骨盤を起こすことができなければ、上半身が後ろに倒れそうになってしまいます。開脚の姿勢を安定させるためには骨盤を引き起こす感覚を身につける必要があります。
骨盤の感覚を身に着けるために、今度は開脚からベターッと上半身を床につける練習をしていきましょう。先ほどのステップと同じように、両脚をできるだけ広げ、そこから上半身を前に倒します。骨盤がどうしても後ろに倒れてしまう人は、お尻の下に枕を敷いてみまししょう。お尻の位置を高くすることで骨盤を前傾させやすくなります。
また、股関節の柔軟性をうまく引き出すためには腹筋の使い方にもコツがあります。腹筋が弛緩したままでは骨盤にテンションがかからず、うまく引き起こすことができないのです。腹筋を上手く活用して骨盤を引き起こすために、次のようなステップをやってみましょう。
○Y字バランスの基礎練習3 べったり開脚
- 1 開脚をして、そこから腹式呼吸で下腹に空気を思いっきりためる
- 2 いっぱいまでたまった状態で呼吸を止めて、膨らませたまま腹筋に力を入れる
- 3 そこから下腹を床に押し付けるイメージで前に押し出す
このように下腹に力を込めながら呼吸をすることで、さらに股関節は緩みやすくなり、骨盤が引き起こされるのと同時にさらに脚が開きやすくなります。開脚ができなかった人には非常におかしな身体の動かし方にも感じますが、何もしなくても身体が柔らかい人は、生まれつきこうした身体の使い方やコツが身についているのかもしれませんね。
開脚の練習は身体が柔らかくなりやすい夜、お風呂に入った後の時間帯がおすすめです。ストレッチというのは不思議なもので、サボればすぐに元に戻ってしまいますが、毎日やればやった分だけ脚を広げられるようになっていきます。胸までべったり開脚できるようになれば目標のY字バランスまではすぐそこです。コツコツ続けていきましょう。
Y字バランスを完成へと導く“ちょっとした”コツとは?
“ガニ股”と“股関節を立たせる”ことをマスターし、べったり開脚ができるようになったら柔軟性は十分です。あとは立ち上がってY字を維持しながらバランスをとるコツを習得することがマスターへのカギ。
仕上げのトレーニングでY字バランスを完成させましょう。
さて、まずは何かにつかまりながら脚を上げてみましょう。べったり開脚までできるようになっている人は、脚に手が届かないということはないはず。かかとをつかんで膝を伸ばせるか試してみましょう。おそらくココからが難しいはず。膝を伸ばして、しかもきれいに立てるようになるにはコツがいるのです。
コツをつかむためのトレーニングがポールを使った脚上げストレッチ。自分の股関節の位置よりも高い台や棒を用意して練習を始めましょう。
○Y字完成トレーニング1 ポールストレッチ
- 1 棒や台に片脚をかけて膝を伸ばす
- 2 上げた脚の膝が外側を向くように股関節から脚をひねる
- 3 同時に骨盤を起こして背筋を伸ばす
ポイントになるのはここでもやはり“ガニ股”です。脚全体を外側にひねりながら膝を伸ばすことで徐々に脚がまっすぐに上がるようになり、体幹が安定していきます。
次のステップは寝転がった状態でY字バランスを作ることです。Y字バランスには脚を上げるための「身体の使い方」と「筋力」の2つの要素が必要です。
ここまでのトレーニングは全部「身体の使い方」を覚えるものでしたよね。仰向けY字ではこれまで練習してきた「身体の使い方」を総点検します。
○Y字完成トレーニング2 仰向けY字
- 1 仰向けに寝転び、上げる方の脚を回して膝が外を向く(がに股)ようにする
- 2 軸足はまっすぐに伸ばしたままにする
- 3 軸足側の骨盤が浮かないように手で押さえながら脚を上げる
脚は横から上げるのではなく、かかと落としをするときのように身体の正面から上げることがポイント。このとき、身体が「く」の字に曲がると立ち上がってバランスをとることができなくなってしまうので、背中が浮いたり、横に曲がったりしないように気をつけましょう。仰向けでY字バランスができるようになっていれば、柔軟性は完全にクリアです。
最後に残ったのは脚を持ち上げるための「筋力」。仰向けの状態とは違って、立った状態では脚を持ち上げるための力が必要になります。具体的に鍛えなければいけないのがお尻と太ももです。
○Y字完成トレーニング3 脚上げトレーニング
- 1 なにかにつかまってバランスをとりながら、片脚を上げる
- 2 膝は曲げたまま、できるだけ高い位置まで上げる
- 3 膝を上げる動作を繰り返す
- 4 膝を上げられる位置まで上げ、腕で支える
- 5 そこから膝を伸ばして脚を一直線にする
- 6 膝を伸ばす動作を繰り返す
前半はお尻、後半は太ももの上側を鍛える運動です。刺激を加える場所をイメージしながら動かすと効果がアップします。この練習を繰り返すことで徐々に脚が身体のほうへと近づけられるようになっていき、脚に腕を絡めてきれいなY字バランスを習得することができます。
開脚の練習からここまで、長いステップで本当にお疲れ様でした。完璧にマスターするまでにはかなりの努力が必要かもしれませんが、きっと素敵な財産になるはずです。
最後に―――ちょっとだけ注意点
Y字バランスを目指してこれからトレーニングを始める人は、関節の柔軟性には限界があるということを忘れてはいけません。
もともと関節ごとにどれだけ動かすことができるのかということは決まっていて、股関節の場合医学的には左右を合わせて90度も広がれば十分柔軟性があるということになっています。それ以上は関節の構造であるとか、靭帯の制限などによって動かせないようになっているのです。
別の見方をすれば、固い筋肉や靭帯は関節を動かしすぎから守るサポーターとして働いていると考えることもできます。毎日Y字バランスの練習をして股関節の可動域を広げていくのは、ストレッチによってサポーターを徐々に緩めていくイメージです。
サポーターを緩めると関節は動かしやすくなりますが、その分不安定になるということでもあります。それでもさらに伸ばし続けると、周囲の靭帯が完全に伸びきってしまったり、関節軟骨への負担が大きくなったりして、大きな外傷や変形につながってしまうこともあるのです。
もちろん靭帯や関節の柔軟性には個人差がありますが、片脚だけで100度以上広げるY字バランスは広げすぎということになります。新体操の選手やバレリーナが難なく180度の開脚ができているのは、骨の末端が固まりきる前の幼少期から練習してきたからです。大人になって関節の形が決まっているのに、それ以上の範囲で広げようとするとかえってケガをしてしまいます。
はじめにも触れている通り、美脚を引き出すのは骨盤の角度であって股関節の柔軟性ではありません。エッセンスだけ押えて、できる範囲で続けていけばいいのです。