滋賀県東部、琵琶湖に接する東近江市では、数年前から一風変わった体操が市民の間で広まっています。
70年あまり前に作られながら一度は記録が失われ、やり方さえわからなくなっていたラジオ体操第3です。
復活のきっかけは同市の『こころとからだの健康づくり事業』。
なんと、幻のラジオ体操第3には、第1、第2だけではカバーできない体力向上、健康づくりにつながるすごい秘密があるようです。
現代によみがえった幻のラジオ体操
アップテンポの曲に合わせて行われる見慣れない体操。
ラジオ体操第3の特徴は、第1、第2よりも早いテンポと、気を抜くと置いていかれそうなほど複雑な組み合わせの動作です。
百聞は一見にしかず。まずは公式動画をご覧ください。
ラジオ体操第3は戦後すぐに作られて第1、第2と共にラジオ放送されていましたが、わずかな期間で廃止となり、その後始まったラジオ体操のテレビ放送には引き継がれることはありませんでした。
映像がなく、簡単なイラスト程度しか残っていなかったラジオ体操第3。
それを現代によみがえらせたのは、龍谷大学で公衆衛生を研究している安西教授でした。
それが東近江市に普及するようになったきっかけは『こころとからだの健康づくり事業』と龍谷大学とのタイアップです。
同市が安西教授に健康管理に役立つ少し強めの運動について意見を求めたところ、ラジオ体操第3に白羽の矢が立ったのです。
私たちにもなじみが深いラジオ体操第1、第2にももちろん身体にいい運動だということが分かっていて、血行促進や腰痛、肩こりの予防に役立つとされています。
ところが、ラジオ体操は全般的に息があがるほどではない「楽」な動作が中心となって構成されているので、下半身の瞬発力をあまり必要としていません。
脚の筋肉が衰えていくことを予防するためには運動強度が十分ではない可能性が残ります。
ラジオ体操第3にはその不足分を補う運動強度が含まれているので、ラジオ体操第1、第2に親しむ中高年の方々にはぜひ取り入れてもらいたい運動だといえます。
動きのキレを意識して運動強度アップ
上の動画でわかるとおり、ラジオ体操第3は第1や第2に比べてテンポが速く複雑な動きが多く組み合わされていて、運動強度が高いのが特徴です。
この高い強度の運動が脚の筋肉を刺激し、筋肉の質の低下を予防することにつながります。
とくに動作が大きいのは第11運動の「跳躍」で、小刻みな小ジャンプを繰り返した後に、手足を広げて大ジャンプすることで、下半身の筋肉をめいっぱい使う必要があります。
このとき、ジャンプをすることに集中すると膝を開いたまま着地してしまいますが、これでは膝にかかる負担が大きくなってしまいます。
膝への負担を減らすため、ジャンプをして足を閉じて着地することがポイントです。
他の動作も、動き始めで素早く動かし、動きの終わりでぴたりと身体を止めることを意識することで、より効率的な運動として筋力維持に役立てることができます。
ラジオ体操第3は現代でこそ活躍しそう
ラジオ体操第3は第1と第2の内容を補完するものでしたが、動きが複雑すぎて音声だけでは伝わらなかったため、ラジオ放送は短期間で終了してしまい、その後テレビ放送に復活することはありませんでした。
しかし、今は違います。スマートホンを活用すれば、いつでもどこでも動画で動きを確認しながら体操に親しむことができます。
ラジオ体操を第1から第3まで行うことで、不足しがちな少し強めの運動を気軽に生活に取り入れることができるのです。
龍谷大学の安西教授によると、複雑な動きと速いテンポで心もほぐし、うつなどの精神疾患の予防にも役立つといいます。
東近江市でも、うつ病予防としてラジオ体操第3を推奨する動きが広まっています。
時を越えて私たちの健康を守るために復活した幻の体操。
上手に活用して心も身体も元気に過ごしたいものです。