外反母趾になると足が変形してしまうために、履物に気をつかう必要があります。
ハイヒールのようなかかとが高い靴は足に悪いというイメージが広く浸透している一方で、足にいい靴というとあまり具体的なイメージがわかないのではないでしょうか。
強いて挙げるとすれば、ランニングなどで用いられるスポーツシューズでしょうか?
もちろん、適切な選び方をすればスポーツシューズは足への負担が少ない履物です。
しかし、とくに夏に関して言えば、最も推奨したい履物は「サンダル」です。
確かに親指が当たらず楽かもしれませんが、脱げやすく歩きにくいイメージもあるサンダル。
実はこの「脱げやすい」「歩きにくい」という感覚こそ、外反母趾のリスクを高める歩き方になっている証拠でもあるのです。
サンダルは足にいい履物
あなたはフラットな鼻緒タイプのサンダル(俗にいうゴム草履)についてどのようなイメージを持っていますか。
「鼻緒タイプは脱げやすい」「歩きにくい」、もしくはクロックス風のサンダルならよくはく。
こういったイメージを持っているのなら、この感覚こそ外反母趾のリスクが高いことを示しているのかもしれません。
どういうことなのでしょうか。
外反母趾の原因は靴や遺伝、加齢による衰えなどさまざまな要因が挙げられていますが、中でも足の指やアーチを支える筋力の低下や、それに伴う足をずるような歩き方はリスクを高めることが知られています。
鼻緒を挟み込む指の力が低下していたり、歩行時にサンダルがすっぽ抜けるような歩き方をしているということは、外反母趾のリスクが高まっていると考えられるのです。
実際に、サンダル(草履を含む)をよくはく人は外反母趾になる確率が低いことが判っています。
例えば、裸足に鼻緒付き草履をはいている石垣島の女性と、靴下に靴をはいている愛知県の女性を比較した研究では、日常的に草履をはいていた石垣島の女性の方が親指の曲がり方が小さく、外反母趾の程度が小さかったことが報告されています。
こうした研究からもわかるように、鼻緒付きの草履タイプのサンダルは、外反母趾を予防する「足にいい履物」なのです。
サンダルのメリットは3点
どうしてサンダルが足にいいのか、具体的にみていきましょう。
まず、サンダルの最大の特徴は足を覆う部分が極端に少なく、つま先からかかとまでが開放的であるという点です。
外反母趾が腫れたり、痛みが出たりする原因は、飛び出した親指の付け根が靴の側面に圧迫されることです。
このため、圧迫するものがないサンダルは、外反母趾の人でも楽に歩くことができます。
また、鼻緒タイプのサンダルは脱げないように親指と第2趾で鼻緒を挟み込んだり、指を反らせたりする必要があるため、足の指の運動量が多くなります。
このように、頻繁に足の指を動かすことは外反母趾や、外反母趾を引き起こす開帳足・扁平足の予防に効果的だとされています。
外反母趾で整形外科などを受診するとしばしば足指の運動を指導されますが、この足指体操をわざわざ習慣づけなくとも、自然と身に着けることができるというわけなのです。
さらに、足をずるように動かす歩き方も外反母趾の要因の一つだとされています。
ずり足は足の指にあまり体重がかからないため、足の指をまげるための筋肉が衰弱し、このことが足のアーチが崩れてしまう開帳足や扁平足を引き起こす一因になっているのです。
ところが、サンダルをはいているときにこのような「ずり足歩行」を行うとサンダルが足からすっぽ抜けてしまいます。
サンダルを長くはいているうちに「ずり足」が矯正され、しっかりとかかとで着地する歩き方が身につきやすくなります。
圧迫がなく、足の指が自由に動かせ、ずり足ではうまく歩けないというサンダルの特徴が、外反母趾を予防もしくは改善するための大きなメリットになっているのです。
鼻緒が付いているタイプを選ぼう
鼻緒付きのビーチサンダルタイプについて詳しく見てみましたが、最近流行しているクロックス風のサンダルはどうでしょうか。
クロックス風のサンダルとは、鼻緒はなく、足の甲までを覆ったスリッパのような形状のものを指します。
見た目の良さや鼻緒を指に挟むのが苦手だという人から支持を集め、今やサンダル市場の中の一つのジャンルとして確立しています。
結論から言うと、クロックス風のサンダルは、鼻緒付きタイプに比べてメリットが少ないと考えられます。
サンダルの最大の特徴だった親指の付け根の開放がなくなってしまうからです。
クロックス風のサンダルは歩行の度に親指の付け根が覆いの内側に触れ、しかもあまり固定されていないため足が大きく動き、変形した部分を痛めやすくなっています。
鼻緒を指で挟み込む運動効果も得られません。
サンダルの利点を最大限活かすためにも、鼻緒付きのビーチサンダルのような形状のものを推奨しています。
また、サンダルの中でもファッション性を重視してかかとが高いものがありますが、当然ながらこうしたものはハイヒールと同じように外反母趾の原因になり得ます。
スタンダードなビーチサンダル(ゴム草履)を選びましょう。