歩くたびに足の爪が皮膚に食い込み痛みが生じる症状は、爪が曲がってしまうことで引き起こされ、専門的には湾曲爪(わんきょくそう)や陥入爪(かんにゅうそう)などと呼ばれています。
足元はふだんあまり目に触れる機会が少ないだけに、ささいなトラブルは見逃しがち。
ところが、痛みが生じる程ではないにしても爪が曲がってしまっている「予備軍」の人が結構たくさんいるようです。
その原因は、「爪の切り方」と「靴の選び方」にあるケースが多いのだとか。
爪が曲がってしまう原因を知り、早めに正しい対処をすることがポイントです。
女性に多い「巻き爪」の原因は?
足の爪は手の爪と同じように指先を保護するためだけではなく、硬い爪を起点にして力を効率的に指先に伝え、歩行の補助の役割を果たしている非常に重要なものです。
どうして足を保護するためにあるはずの爪が痛みを引き起こしてしまうのでしょうか。
実は、巻き爪はあまり歩かなくなった私たちの生活習慣と深い関連があるようです。
爪は指先に力が加わったときに、下からの圧力を受けて平らになります。一方、この力が加わらないと、乾燥による縮みや周囲にある肉からの圧迫で爪は自然に曲がってしまいます。
爪が平らな形状を保ち続けるためには、日常的に下からの圧力が加わる必要があるのです。
しかし、生活習慣の変化で私たちの歩く時間は大きく減ってしまいました。
さらに、歩いたとしても、指先にあまり体重をかけない歩き方になってしまう人が多く、指先に十分な力が伝わっていないようです。
このような背景から、巻き爪のリスクを抱える人は男女を問わず、非常に多いと考えられています。
しかし、実際に爪のトラブルで悩む人は女性に多く、巻き爪が進行して肉に食い込んでしまう陥入爪(かんにゅうそう)患者の7割が女性だといわれています。
これは靴の形状が大きく関係しているようです。
例えばハイヒールのようにつま先が狭い靴は、爪が横からの強い圧迫を受けています。
この力は外反母趾を引き起こすことで知られていますが、巻き爪の原因にもなりやすいのです。
このように歩き方や靴が巻き爪のリスクを高める一方、加齢も重要な要因の一つ。
年齢を重ねると爪の伸びる速度は遅くなり、それとともに爪の厚みは増していきます。
また、仕事をリタイアする頃からかかる人が多くなる爪水虫(爪白癬)では、爪が変形しやすく、巻き爪のリスクが高まります。
しかも、爪水虫では爪がボロボロと崩れやすいため針金を使った矯正ができず、爪水虫を先に治療しなければいけなくなりますが、この爪水虫も進行すると治療が難しくなってくるためトラブルが長引きやすくなってしまうのです。
ここがポイント!
爪の周囲の痛みを予防するためには、つま先が狭い靴をさけて、運動靴のような指先が自由に動く靴をなるべく履くようにするとともに、指先を清潔に保ち水虫などがある場合には早期に治療するように心がけることが大切です。
「痛いから爪を切る」は危険、陥入爪に発展する可能性も
巻き爪は専門的には湾曲爪(わんきょくそう)と呼ばれていて、変形した爪の角が皮膚を巻き込むことで痛みが生じます。
しかし、いくら爪が痛いからといって、爪の角を切ってしまうことは避けなければいけません。
爪の角を切ることで一時的に痛みがなくなっても、爪がない部分の肉が盛り上がり、さらに巻き爪を悪化させ、爪が肉芽に食い込んでしまう陥入爪(かんにゅうそう)に発展してしまうことがあるからです。
このように深爪をする習慣や、巻き爪の状態で痛みを我慢しながらハイヒールのようなつま先の狭い靴を履き続けると、陥入爪は進行して、はじめは痛みや赤くなる程度だったものが、化膿して膿汁がしみ出してしまうことまであります。
巻き爪を悪化させないポイントは爪の切り方にあります。
まず、上から見て指先の肉が爪からはみ出している状態は明らかな切りすぎです。
爪の角が周囲の肉に圧迫されるのを防ぐため、爪は指先の肉よりも1ミリほど余分に伸ばし、爪の先に白い部分ができるようにしましょう。
また、爪の角は指の形に添って丸く切り取るのではなく、先が平らになるように切り落とします。(爪の形が4角形になるため、スクエア切りと呼ばれています。)

角が気になる場合には、やすりなどを使って少しだけ削り取るようにします。
現在流通している爪切りには歯が丸くなっているものと、まっすぐになっているものがありますが、歯が丸くなっているものは爪を丸く切るのに適した形状。
足の爪をまっすぐに切るときには歯がまっすぐになっている爪切りを選ぶと便利です。
ここがポイント!
爪の角が当たって痛いからといって、深爪することは止めましょう。
スクエア切りをすることで爪の角が指先の肉と当たることがなくなり、湾曲爪や陥入爪の予防につながります。
化膿したら病院へ
巻き爪が皮膚に当たって痛む場合、注意したいことは、まず深爪をせずにスクエア切りをすることです。
同時にかかとが高いハイヒールは極力避け、運動靴のような指先が自由に動かせる靴を履くように心がけましょう。
また、市販されている爪の矯正器具も痛みを取り除くのに役立ちます。
爪が皮膚に食い込んで痛んでいる場合には、傷口から感染して化膿してしまうのを防ぐため、爪の周りをせっけんを使って良く洗い、清潔に保つ必要があります。
抗生物質が入った軟膏を塗ることも効果的です。

さらに悪化して、傷口から膿汁がしみ出しているような状況では、感染を起こしているので病院で診てもらったほうがいいでしょう。
病院での治療法は、以前は皮膚に食い込んでいる爪を切除する手術療法が主流でした。
しかし、現在では形状記憶のワイヤーを使った爪の矯正で高い効果が期待できる方法も開発されています。
治療の期間は長くなりますが、再発が少なく、元に戻せない手術とは異なり簡単に行えるため、広く行われるようになってきました。
このような矯正治療と抗生物質による治療が並行して行われています。
整形外科や皮膚科に相談してみるといいでしょう。
爪は一生伸び続けるもので、しかも高齢になるほど爪が厚くなるためトラブルが起きやすくなります。
病院での矯正が成功した後でも、再発する可能性はなくなったわけではありません。
つま先にあまり負担をかけないような靴を選ぶとともに、巻き爪になりにくい爪の切り方を実践して予防に努めましょう。