女子大生の「冷え症事情」から見えてくる冷えを呼ぶ意外な生活習慣とは

気温が下がると手足が冷えて、一度冷えるとなかなか温まらない……。

このようなつらい症状をもたらす「冷え症」は若い女性に多く見られ、衣・食・住の生活習慣がそれぞれ深く影響していると考えられています。でも、冷えをもたらす生活習慣って具体的になんなのでしょうか?

実際に冷え症さんの割合が高い女子大生に尋ねてみると、まさか!?という意外な生活習慣が冷え症を引き起こしている可能性が浮かび上がってきました。睡眠時間の管理から、あの意外な食べ物まで、冷え症に悩むあなたに知っておいて欲しい生活習慣の改善ポイントをお伝えします。

女子大生に聞きました!あなたは冷え性?

実は「冷え症」という症状は東洋医学に独特の考え方なので、西洋ではあまり積極的に研究されていません。そのため、身体の冷えに関する調査は、日本以外ではほとんどみられないのが現状なのです。(日本食生活学会誌Vol.26 NO.4 2016 197-204)

ところが冷え症への対処法の重要性は年々高まっているといえそうです。いまやどこに行っても冷暖房が普及しているため人間側が適温だと感じることができる気温の範囲が狭くなり、そこにファッションや食生活といった生活習慣の変化が重なって冷え症に悩む人が非常に多くなっているのです。

女性大学生や女子短大生を対象にした調査では、ほぼ半数の生徒が身体の冷えに悩まされているという結果が出ています。〔262人中131人(石川看護雑誌Vol.9 2012 91-99)、642人中321人(日衛誌Vol.49 NO.6 1995 1004-1012)など〕

どの調査でも共通しているのは、冷え症を抱えている人は食べ物や服装に自分から制限をかけなければいけない事態に追い込まれているということです。身体の冷えを気にしている人は、当たり前のことですが、冷たい飲食物を控える傾向があります。さらに露出の多い服装を着ないという傾向もはっきり現れていて、趣味嗜好にも影響を与えてしまっているかもしれません。

さらに、冷え症に悩まされている人は同時に頭痛や手足のむくみなどの他の症状や、夜中に寝づらい、起床時に手足がこわばるなどの生活の支障が出るなど、非常につらい思いをしている実態も明らかになってきました。

睡眠・体重、そして野菜!?意外な冷え症要因

では、その冷え症を引き起こしている生活習慣とは一体どのようなものなのでしょうか?

一般的には、「痩せすぎ」が体感温度に大きく影響しているといわれています。適正体重はBMI22~24程度だといわれていますが、特に女性は見栄えを気にしてBMI20以下を目指す人が少なくありません。ところが若い女性の低栄養は、骨粗しょう症や妊娠・出産に関わるリスクの増加が指摘されていて、冷え症とも深く関係していると考えられています。女子大生の調査でも、BMIが低いほど冷え症の傾向が強いことがわかっています。(日本食生活学会誌Vol.26 NO.4 2016 197-204)冷え症に悩む人は、行き過ぎた体重管理を見直すことを対策の入り口とするべきかもしれません。

同時に、広く知られている要因が「生活リズムの乱れ」です。冷え症は体温管理の問題なので、自律神経系の機能低下やホルモン分泌が影響していると考えられています。中でも強い影響を与えているのは「睡眠リズム」で、冷え症の人は7時間眠れていない割合が高いという結果も。(日衛誌Vol.49 NO.6 1995 1004-1012)体温周期を安定させるために、①睡眠を規則正しく②食事の時間をそろえる、といった対策が必要でしょう。

一方で、あまり知られていない意外な要因も調査では浮き彫りになっています。

それは食生活に関連していることなのですが、「麺類を食べる機会が多い人は冷え症になりやすい」ということです。麺類は副菜がなくても食べることができることから、栄養バランスが偏って特にタンパク質が不足して体温の低下を招いてしまうことが考えられます。同じような要因から冷え症を抱える女子大生は「インスタント・レトルト食品」の摂取が多いこともわかっています。

では野菜を積極的に食べればいいのかというと、そう単純なものでもないようです。同じ調査では、意外なことに「冷え症の人は野菜の摂取が多い傾向がある」ことが示されているのです。なんと、おなじBMIで比べた場合「野菜をたっぷり食べる」ことは「ほとんど食べない」ことよりも、冷え症の発症率がおよそ5.6倍も上昇しているのです。菜食が行き過ぎた結果、タンパク質や脂質の栄養状態が悪化している可能性が指摘されています。(日本食生活学会誌Vol.26 NO.4 2016 197-204)

このような結果から、冷え症を防ぐためには一つの食品に偏重するのではなく、炭水化物・タンパク質・脂質・ミネラル・ビタミンと、各栄養のバランスに十分配慮した食事を適正体重が確保できるように十分食べる必要があるようです。

冷え症対策、手足の末端を守る服装を

冷え症を抱えている人は、手足の末端、そして手首、足首を覆うような服装を心がけるようにしましょう。靴下の保温効果は足先だけではなく、直接靴下と触れていない手にも及びます。就寝時にも積極的に活用した方がいいでしょう。

同時に、機能性アンダーウェアを使ってみることをオススメします。最近では繊維が自分で発熱するような高機能なウェアが開発され、活用される幅が広がっています。普通のアンダーウェアに比べると高価なことに違いありませんが、それだけの価値はあるでしょう。

具体的には次のようなウェアがあります。

○ミズノ ブレスサーモ

私たちの体から常に出ている水蒸気を吸収して発熱する高機能ウェア。自分で発熱する素材が暖かさの秘密。

○Mont-bell スーパーメリノウールexp

ブレスサーモとおなじように水蒸気を吸収して発熱する素材を使っています。

○THE NORTH FACE 光電子アンダーウェア

遠赤外線で体を動かさなくても暖かくなるとのこと。発熱の仕組みが水蒸気じゃなくて遠赤外線なので、乾燥肌が気になる人は、ブレスサーモやメリノウールより合っているかもしれません。

このようなスポーツメーカーが提供しているアンダーウェアは、比較的薄い素材でできているので、セーターやシャツも重ね着しやすいのがうれしいメリット。上半身だけじゃなく下半身用も作られているので上下セットで着用することをオススメします。元々は登山のようなアウトドア用に開発されたものですが、日常生活でも十分すぎるほど活躍してくれるでしょう。

肩こり、不眠・・・。ストレス症状は冷えに直結

先ほども説明したとおり、女子大生へのアンケートでは冷え性だと答えた人では、肩こり、不眠、頻尿、月経痛のような症状を複数(平均では4.27個)抱えていました。さらに不眠や倦怠感といった精神的な症状を抱えている人は、冷え性をより苦痛に感じやすいということもわかっています。(石川看護雑誌Vol.9 2012 91-99)さらに、「ストレスをよく感じる」人はおよそ3倍も冷え性の発症率を高めるとも。(日本食生活学会誌Vol.26 NO.4 2016 197-204)どうやらストレスに起因するような症状をいくつか抱えている人は、冷え性になりやすいということができそうです。

冷え性を予防・対策するためには、生活の中でストレスをためない工夫をするべきです。ストレスの解消法は人によって異なるでしょうが、とにかく冷え症によって生活に支障が出ていると思いなやむのではなく、ここまで紹介してきたような対策に積極的に取り組んで、冷え症対策をしているからこんなによくなってきたというマインドに変えていくことも大切なことでしょう。

身体を温めることも必要不可欠ですが、同時に心にも火をつけていく。これが冷え症に悩むあなたへのアドバイスです。

この冬はどうか暖かくしてお過ごしください。