急病遭難を防ごう!最近増えている登山外来とは?

ヒマラヤ山脈やヨーロッパのアルプス山脈など、海外の高山をトレッキングするツアーに参加しようとしたら、事前に診断書を提出しなければならないという話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

このような制度があるのは、高い山の上は、平地とはあまりに環境が異なるため、急病にかかるリスクが高いといわれているからです。

日本国内の山でも、登山中に突然病気が発症し、遭難してしまうケースが多発しています。

急病遭難を防ぐため、事前に登山外来で健康診断をしてみてはいかがでしょうか?

遭難の7~8%は「病気」

登山人気の高まりを受けて、遭難してしまう人も増加しているということが報じられるようになりました。

実際に、警察庁の資料を見てみると、遭難者の数は増加傾向で、平成27年には初めて3000人を超えてしまいました。(平成28年や29年は悪天候の影響などで減少)

遭難する要因のうち最も多いのが「道迷い」で、その下に「滑落」、「転倒」が続きます。

そして意外なことに、転倒に次ぐ4番目の要因が「病気」なのです。

山岳での死因の多くを占めるのが、滑落による外傷、低体温症や疲労凍死、そして心臓突然死だといわれています。

滑落や低体温症は、ゴールデンウィークや晩秋の悪天候の際、大量遭難に発展してしまうことがあるので、そのたびにニュースでも大々的に報じられます。

しかし、その陰で年間を通して多いのが、登山中の心臓突然死や脳梗塞です。

低温や激しい運動、さらには大量の発汗による脱水が進むことで、高山では突然病気が発症してしまうリスクが高いのです。

現在の登山のあり方に大きな影響を与えた『日本百名山』の著者である深田久弥も、登山中に脳梗塞を起こしたことで亡くなっています。

登山をしている人は、同世代の人に比べて体力に自信があって病気とは無縁だと考えているかもしれません。

しかし、万が一の場合を考えて、自分の体に潜むリスクを確認してみることをオススメします。

内科的疾患を事前に把握しておこう

滑落や低体温症であれば、事前の準備やルート上での警戒で、おおよそ防げるものでしょう。

しかし、突然やってくる内科的疾患は、自分にリスクがあることを知っておかなければ対策も難しいかもしれません。

登山に出かける前に、自分の体の状態を把握できるのが「登山外来」です。

登山外来の本来の対象は、海外の本格的なツアー登山に参加する際、事前に診断書を用意しなければならない人です。

このような人向けに、心肺機能や持病がないかを調べてくれます。

最近では、国内の登山人気の高まりを受けて、2500m以上の高山や、泊りがけの山行に行く人も対象にしているところが増えています。

登山外来では、目的によって異なりますが、一般的に採血、尿検査、心電図検査、レントゲン、肺機能、診察などを行っています。

必要があれば、心エコー、心肺運動負荷試験が追加されることもあるようです。

診断をする医者は登山に精通しているので、心拍数などに問題があれば、体に負担を掛けないためにどのような登山をしたら良いのかをアドバイスしてくれます。

基本的には自費診療となってしまいます。

東京医科大学病院「登山者・高山病外来」

他にも、各地に登山外来を受けてつけている病院や医療機関はあるので、調べてみると良いでしょう。

もし、海外のツアー登山に参加するための診断書が必要という場合、診断書の交付に1ヶ月程度かかることがあるため、登山日の2ヶ月前には予約をした方がいいでしょう。

登山中は心拍数のペース配分と水分補給を

なぜ、登山中に急病を発症し安くなってしまうのでしょうか。

その理由は、強い運動負荷が長時間続くことと、大量に汗をかいて脱水状態になってしまうことにあります。

そのため、急病を防ぐため、とくに重要なのが水分補給です。

登山中はトイレの場所が限られているので、水分を限界まで摂らないという人も多いようですが、脱水状態に陥ると頭痛などが引き起こされたり、脳梗塞のリスクが高まったりしてしまいます。

内臓疾患のリスクを下げるためには、心拍数を安定させるためにペースを緩め、普段よりもおおめに水分補給を心がけるといいでしょう。

登山を始める前にもたくさん水を飲んで、体内に水分をためておきましょう。

滑落や低体温症に警戒することはもちろんですが、それと同じレベルで、心臓や脳の血管にかかっている負荷を意識し、体に優しい登山を行いましょう。