隠れストレスに要注意!腰痛はストレスコントロールから始める時代へ

厚生労働省の調査では男性の自覚症状の第1位、女性でも肩こりについで第2位となっており、非常に多くの方が抱えている悩みでもある腰痛。(平成22年国民生活基礎調査より)

日本整形外科学会の見解では、その大半は病院で標準的な検査をしても、原因となっている病気は見つからないとしています。(腰痛診療外ガイドライン2012より)

では、一体なにが腰痛の原因になっているのでしょうか?

意外に思われる方も多いかもしれませんが、近年、腰痛の多くには精神的なプレッシャーやストレスが多少なりとも関係していると考えられるようになってきました。

腰痛も、頭痛やめまい・胃腸の不調などとならんで、ストレス症状の一つである可能性が高いのです。

なかなか逃げられない「腰痛悪化スパイラル」

専門的な知識もない私たちからすると、常に背中に違和感があったり、耐えられないような腰の痛みを抱えていたりすると、腰の筋肉か骨に異常事態が発生していると考えてしまいがちです。

しかし、実際にクリニックを受診した患者の85%では、標準的な検査をしても痛みの原因になるようなケガや病気は抱えていないといわれているのです。(腰痛診療ガイドライン2012)(残りはヘルニアや狭窄症、感染症、がんなど)

さらに詳しく見てみると、同じ椎間板ヘルニアでも強い痛みを訴える人もいれば、検査をするまでヘルニアがあることに気がつかないような人もいます。

実はこのような痛みには、精神的なストレスなどの心の問題が大きく関わっていることがわかってきました。

慢性的なストレスにさらされると、体に指令を伝える伝達物質(ホルモン)のバランスが崩れ、痛みの制御がうまくいかなくなってしまうのです。

このような仕組みで生じた強い痛みがさらなるストレスの源になり、さらに脳のコントロール機能が低下してしまう「腰痛悪化スパイラル」(ストレス悪循環)が、なかなか治らない腰痛の陰に潜んでいるかもしれません。

従業員50人以上で義務化されているストレスチェック

振り返ってあなたの腰痛はどうでしょうか?

最近、仕事に追われていませんか?

生活様式が変わって、なれない環境に悪戦苦闘していませんか?

腰痛を最初に感じるきっかけは無理に腰をひねったり、バランスを崩したりといった物理的なことかもしれませんが、ストレスは治るはずだった腰痛を長期化させて、更なる悪化を招いてしまう非常に大きな要因です。

腰痛治療はもはや湿布・コルセットだけに頼るのではなく、心からのアプローチが必要不可欠な時代なのです。

と、ここまで腰痛とストレスの関係性について長々と説明してきましたが、いきなりあなたの腰痛にはストレスが影響しているといわれても、心当たりがなければ実感が伴わないという人もいることでしょう。

また、日本人の傾向として、肉体的に耐えられないのは仕方ないとしても精神力で負けるのだけは我慢できないという人も多いのも事実。

しかし、過労死するおそれが強いのは、プレッシャーに弱い人より仕事に充足感を覚えストレスに強いという自覚がある人の方。

ストレスは蓄積していても、それを自分の感覚で気がつくことは難しいことなのです。

過労死やストレスを苦に自殺する人が後を絶たない自体を受けて、国は2015年より従業員50人以上の全事業所に対して年1度のストレスチェック実施を義務付けています。(50人未満は努力義務)

また、厚生労働省の「心の耳」というサイトでは、57の質問事項からなる簡単なストレスチェックを誰でも・いつでも受けることができます。

実はこのストレスチェック、結果がグラフで表示され隠れストレスを見つけ出すのに絶好のツールでもあります。

ストレス状態は数日のうちにあっという間に変動してしまうもの。

年1回といわずに、気分が晴れないと感じたら小まめにチェックしてみることをオススメします。

隠れストレスの傾向と対策

「心の耳」のストレスチェックがどのようなものか少し詳しく見てみましょう。

57の質問に答えると、次のようなグラフで結果を知らせてくれます。

グラフでは、中心にある色の濃い部分が要注意ゾーン。

円周部がもっとも危険度が少ない状態で、注意の必要性が高まるほど中心に向かって近づいてくるようになっています。

ここで特に注目して欲しいのが、真ん中にあるグラフ「ストレスによる心身反応」の項目。たとえ同じ量のストレスを感じていても、それがどのように体や心に影響するのかは、人によって大きく異なります。

特にストレスがある状態によって腰痛を敏感に感じるようになっている人は、身体愁訴が要注意ゾーンに入っている可能性が高いでしょう。

抑うつ感や疲労感のスコアも要チェックです。

もしこのような項目が要注意ゾーンに達しているのなら、一度医療機関を受診してみることをオススメします。

自分の傾向がわかったら、今度はそれをもとに対策を練ってみましょう。

まず対策に着手したいのが人間関係に関する項目について。

対人関係の悪化は、心の不調に短期間のうちに直結してしまいます。

ただしこれは、自分ひとりの力ではなかなか解決できるものでもありません。

気が置けない友人がいれば相談を。

もしそれも困難な状況なら、人間関係をまとめた日記をつけてみましょう。

文字に書き起こすことで関係性を整理でき、一歩引いたところから冷静に見つめなおすきっかけになります。

考えられるストレス対処法

1.ホットラインに相談

ストレスは一人で抱えることで増幅してしまうおそれも。

なすすべがないと感じたら専門機関に相談してみましょう。

話すことで楽になったり、思わぬ解決の糸口がつかめたりすることも。

2.趣味で発散

とくに疲労感や身体愁訴が強く出ている人は、一度体を休めてから趣味に没頭してみては。

カラオケやスポーツはたとえ下手でもストレス解消に効果的。

3.楽になる思考パターンを知る

ストレスを抱えている人は、先のことが心配になって十分な休息ができなかったり、マイナスな思考回路に陥ったりしがち。

明日のことは明日になってから考える。

なるようになるから大丈夫。

楽になれる思考パターンを知って、できれば実際に取り入れていきましょう。