一般的に40代半ばごろからやってくる更年期。
女性特有のものだと考えられがちですが、最近では男性にも更年期があることが報告されて一時期話題になりました。
男女問わず、更年期の期間中には性ホルモンのバランスが大きく変動し、身体にさまざまな変化が現れます。
一般的にこの年代には社会的に責任ある立場にある場合も多く、社会環境上の悩みが多い時期です。
また、近年に特有の事情として、晩婚化の影響からちょうど子どもの思春期と重なり、家庭環境上の悩みを抱える人が増えていることも想定されます。
更年期には、身体的な変化に精神的なストレスも加わって、さまざまな不調が現れやすいのです。
このような不調に対して、実は運動が良い影響を与えてくれそうです。
スポーツがどういう役割をしているのか考えてみましょう。
更年期の症状とうまくかみ合う運動の効果
更年期に見られる症状は個人差が大きく一概にまとめることは簡単ではありませんが、代表的なところでは(1)突然の発汗(2)重だるさ・疲れやすさ(3)肩こりや腰痛の悪化(4)イライラ、といった症状を感じやすいようです。
このような更年期障害に対して積極的にスポーツ活動に取り組む方法が注目されています。
スポーツに親しむことで得られる身体への好影響が更年期障害の諸症状と上手く対応しているためです。
どういうことか、もう少し詳しく見てみましょう。
○血液の流れが良くなる
適度な運動をすることで血液の循環が促されます。
肩こりや腰痛、または末端の冷え症の改善が期待できます。
○代謝が良くなる・抵抗力が増す
運動をすることで脳も筋肉も刺激を受け、代謝が促進されます。
エネルギー代謝で肥満を防ぐというだけではなく、骨粗しょう症の予防や糖尿病への抵抗力をつけるためにも運動は推奨されています。
○ストレスに強くなる
適切な運動は爽快感をもたらしてストレス解消につながります。
それだけではなく、運動によってストレスを感じさせるホルモンの分泌が抑えられ、ストレスに対する抵抗力が高められることが報告されています。
さらにスポーツ活動に打ち込むことで生活意欲が増加したり、睡眠が充実したりするなど、精神面でも好影響が期待されています。
とくにスポーツにおいて重要なのは、目標を持つことで得られる充足感です。
このような運動効果が、ちょうど更年期の諸症状と上手くかみ合っているというわけです。
更年期の先を見据えて運動習慣を身につける
更年期にさしかかるころは、ちょうど日本人の病気の傾向が変化する年代でもあります。
厚生労働省の調査では、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は男女とも40代以降で増加し始めることがわかっています。
これまでの生活習慣の積み重ねが、この年代ごろから身体の表に現れ始めるということです。
運動を始めて筋肉が収縮すると、代謝や筋機能の動きにかかわるさまざまな物質が分泌されます。
その中には脂肪を分解したり、糖代謝を促進したり、さらに炎症を抑制したりするものが含まれていることが近年どんどん明らかになっています。
このような研究結果の積み重ねから、運動が生活習慣病予防に効果的であることはご承知の通りです。
したがって、更年期をきっかけとして運動を始めることは、その後に控える生活習慣病の予防にもつながります。
さらに年代が高くなると、今度は運動器が衰弱することで自立できなくなるサルコペニアの問題が大きくなってきます。
30年後を見据えて運動しようというわけではありませんが、加齢による筋力の低下は避けられませんから、40代のころから無理のない運動習慣を身に着けておくことは60代になってから運動を始めるよりずっと楽なはずです。
まとめると、更年期と上手く付き合うというときにも、生活習慣病やサルコペニアを予防するというときにも、運動は共通して効果的な方法だということです。
スポーツ活動に取り組むことは、生活の質を高める上で大変意義深いものだといえそうです。
生活習慣病を患っている人や、運動器に障害がある人ではそれらを十分考慮して運動に取り掛かる必要があります。
とはいえ、あまりに運動の負荷が小さいと運動効果が得られないので、強すぎず、弱すぎずのちょうどいい領域を探り出さなければいけません。
自分だけで判断するのではなく、医師などの専門家に相談しましょう。