鍼灸治療は血のめぐりを良くしたり、五十肩・腰痛・神経痛などさまざまな体の痛みに対して広く行われている療法ですが、針を刺されるということに恐怖心や不安を抱いてしまうという人も多いのではないでしょうか。
痛そう、怖そうといったイメージから、体の不調があっても鍼灸治療を避けてしまう方が少なくないようです。
しかし、なにも刺す施術だけが鍼治療ではありません。
鍼治療の中には、皮膚の上から経絡(いわゆるツボ)を刺激するだけの刺さない方法も存在しているのです。
皮膚の上からツボを刺激すれば、同じような効果が得られるとされています。
どのような鍼があるのか、代表的な例を見てみましょう。
刺さない鍼の代表例
〇てい鍼
刺さない鍼の代表格がてい鍼です。
てい鍼は先端が丸い匙のような形をしていて、アルミや金、銀などの金属でできています。
先端の突起をツボや経絡に沿って押し付けたり擦り付けたりすることで、心地よい刺激を与えていきます。
刺激に敏感な方や小さな子供に使われることが多いようですが、もちろん一般の方でも受けることができます。
〇ローラー鍼
ローラー鍼はもともと小児鍼のための器具でした。
小顔矯正用に普及している美顔ローラーのような形をしていて、回転する部分に突起が並んでいます。
皮膚の上からコロコロと転がすことで刺激を与えていきます。
ローラー鍼の道具は誰でも簡単に買うことができ、体を傷つける心配もほとんどないため、自宅でのセルフケアに最適です。
〇打鍼
打鍼は室町時代にはじまった日本独自の鍼治療で、かつては五寸釘のような太い梁を木槌を使って腹部に打ち込むという荒々しい施術法だったといわれていますが、現在では皮下に差し込む針を使わず、先が丸い鍼をツボにあてて木槌で叩打し、圧力や振動を使って刺激を与えるという非常にソフトな施術に変化しています。
〇円皮鍼(置き鍼)
円皮鍼はいわゆる刺す鍼の一種ですが、針の長さはわずか1mmほどです。
ピップエレキバンのような形をしていて、円形のシートの真ん中に長さが1mm程度の鍼がくっついています。
また、針先がない押圧タイプのものもあるようです。
筋肉のこりを感じている場所や、ツボに張り付けて使用します。
ミクロな鍼なので鍼を刺したまま激しい運動をすることもでき、角界を筆頭にスポーツ界でも広く使われています。
普通の針もほとんど痛くありません
実は、刺すタイプの鍼治療も、身構えるほどの痛みを感じることはあまりありません。
現在、鍼灸治療で使われている針は体の負担が少なくなるように素材や形が工夫されています。
施術の現場でよく使われる0号針は、直径がおよそ0.14mmと注射針(0.7mm)よりもはるかに細いもので、注射針のようなハッキリとした痛みを感じることは稀だとされています。
鍼灸学校では「痛いと感じさせる鍼は最低」だと教えられるとか。
刺さない鍼を体験して、鍼治療への先入観が少し薄らいで来たら、通常の鍼治療も受けてみるといいでしょう。
ただし、鍼治療にはいくつかの注意点があります。
次のようなことに気をつけましょう。
・高熱があるとき、飲酒後、極度の疲労時には効果が期待できません
・食事は施術を受ける1時間前までに済ませましょう
・施術後の入浴や運動はできますが、倦怠感や発熱、痺れが現れることがあります。これらは好転反応と呼ばれるもので、体への悪影響はありませんが、休息をとるようにしましょう。
・稀に出血や内出血を起こすことがあります。薬や病気の影響で出血しやすい方は注意しましょう。
・日本の法律では鍼治療に保険が適用できるのは【神経痛・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腰痛】だけです。ほかの症状に対して効果が検証されているものもありますが、自費治療になってしまいます。
参考:東京女子医科大学「治療にあたっての注意事項」および各種法令
以上の点にさえ気をつければ、きっとあなたの心強い味方になってくれるはずです。