雨が降る数日前から頭や腰、古傷がズキズキと痛みだす。
季節の変わり目に多いこうした症状を総称して「気象病」といいます。
天気と健康の関連性への注目度は年々高まり、中には柔道整復師の資格を取得した気象予報士もいるとか。(参照:気象予報士応援ナビ)
「気象病」への理解は、日本よりもむしろドイツやアメリカで早くから進み、フランクフルターアルゲマイネ新聞(ドイツ)では、古くから天気予報欄にさまざまな症状(例えば関節リウマチや片頭痛など)の痛みへの警戒度が載っていたことは有名です。
とはいえ、天気によって痛みが悪化するなんて摩訶不思議。
一体どのような仕組みなのでしょうか。
「気象病」とは?
Wikipediaによると「気象病」とは、「気象の変化によって症状が出現する、あるいは悪化する疾患の総称」であり、頭痛、腰痛、肩こりの他、心臓発作や脳出血が知られているとしています。
原因となる「気象の変化」とは、何なのでしょうか。
これまで実証研究は少なく、一体何が多岐にわたる疾患を引き起こしているのかは明らかになっていませんでした。
名古屋大学では、長い間無視されてきた気象病の発症メカニズムについて研究を続けてきました。
人工的に低気圧と同じ環境を作り、被験者がいつ痛みを感じるのかを詳細に記録。
その結果、気圧が「気象病」の痛みを引き起こしている可能性があることを突き止めました。
さらに研究では、内耳の気圧センサーが自律神経に関与することが「気象病」の発症メカニズムであると推察しています。
(参照:名古屋大学研究シーズ集『気象病の予防治療法の開発』佐藤純教授)
気温や湿度に比べ、変化を実感できない気圧。
しかし、私たち人間はその変化も驚くほど敏感に感じ取っていたようです。
台風やゲリラ豪雨。気圧と気温の急変に注意
主に気圧が低下する過程で不調を訴える人が多いですが、中には気圧の急上昇で不調を訴える人もいます。
気象病を引き起こすのは「天候の悪化」というよりはむしろ、「気圧の急激な変化」です。
気圧の変化に加え、気温が低下すると体調を崩しやすくなります。
気温の低下が見込まれる条件では、特に注意する必要があるでしょう。
注意したい気象条件
〇一日の気温差が10度以上
〇気圧の変化が前日と比べて10hPa以上
具体的には……
〇梅雨前線が日本付近に停滞しているとき
〇発達した積乱雲に伴うガストフロントの通過時
〇台風が日本付近に接近したとき
〇発達した低気圧に伴う寒冷前線の通過時
〇日本海上に寒冷渦が停滞しているとき
〇晩冬、日本海南岸に低気圧が接近したとき
特に注意したい気象現象が台風です。
台風は動きが速く、気象の変化が急激なため強い症状が出やすいといわれています。
また、気圧や気温の変化が伴えば、気象に関係がない場面でも症状が現れることが考えられます。
代表的な例が高い山に登ったとき。
標高が上がることでおのずと気圧と気温が下がり、天候が悪化したときと同じような条件がそろいます。
このほかにも、高層ビルのエレベーターや飛行機など、気圧が急激に変化するシーンでは「気象病」の症状が出る可能性が考えられます。
ストレスを解消し、適度な運動を
近年の気象変動の影響で、日本でもゲリラ豪雨やスーパー台風など極端な気象現象が目立つようになってきました。
こうした要因から、「気象病」に悩む人の数は年々増加しているといわれています。
では、どのように対策をすればいいのでしょうか。
「気象病」は乗り物酔いしやすい人がかかりやすいといわれています。共に内耳の感覚が敏感だと起こりやすいため。
そのため、内耳の興奮を抑える酔い止め薬がめまいや頭痛といった「気象病」の症状を抑えることにも効果があるとされています。
頭痛や腰痛などの症状が出る兆候を感じたら服用するといいでしょう。
さらに耳のマッサージも取り入れましょう。
・耳を上・横・下に5秒ずつ引っ張る
・耳を軽く引っ張りながら、後ろに向かって5回ゆっくり回す
・耳の下に親指、上に人差し指をあて、上下に折り曲げる
また、前出の佐藤純教授が開設した天気痛外来では、微高気圧装置を使って気象病の対策をしているとのこと。
気圧が高めの環境に身をおくことが、気象病を抑えることにつながるようです。
(参照:『天気痛ドクター』(佐藤教授のホームページ))
当たり前のことかもしれませんが、気象病のような「なんとなく体の不調が続く」という状態の対策では、適度な運動と、規則正しい食事時間・就寝時間を心掛けることが大切です。
雨が続く梅雨の季節は、特に「気象病」に注意したい時期。
連日家にこもりがちになると、ストレスの調整がうまくいきません。なるべく体を動かすようにしたいところです。
「気象病」の予防も、行きつくところは生活習慣病の予防と同じ。
規則正しい生活を心掛けましょう。