気の合う友人との宴会は楽しいが、羽目を外して飲みすぎると、翌朝大変なことに…。
楽しい宴会で飲みすぎた翌日、憂鬱なのが二日酔い。
お酒の強さによって程度の差こそあれ、飲みすぎた翌日の二日酔いは避けられません。
特徴的な症状が、体がだるい、頭が痛い、肩こりや腰痛が悪化する……。
体のだるさや頭痛はともかく、肩こりまで悪化してしまうのはどうしてなのでしょうか。
原因は体内に蓄積していくアルコールの代謝物にあるようです。
しっかりとした対策で予防線を張るように心がけましょう。
「お酒でぐっすり」は大間違い!酒は体を疲弊させる
仕事でくたびれて帰宅した後、ぐっすり眠ろうと晩酌を習慣にしている人は意外に多いようです。
お酒を飲むと眠たくなり、実際に飲酒によって眠りに落ちるまでの時間は短くなります。
厚生労働省の報告では、寝酒をするという人は30.3%。
10か国平均の19.4%よりもかなり高い割合であり、日本人の中ではお酒は睡眠導入剤の代わりという認識を持つ人が多いようです。
(健康づくりの為の睡眠指針2014)
ところが、ここには大きな誤解があります。
お酒の睡眠導入効果は短期的なもので、総合的にみるとかえって睡眠が浅くなり、翌日の肩こりや疲労感を悪化させてしまうのです。
どういうことか詳しく見てみましょう。
睡眠には深い眠りのレム睡眠と、浅い眠りのノンレム睡眠があり、通常これらは周期的に繰り返しながら徐々に覚醒に向かっていきます。
質のいい睡眠をとるためには、深い眠りのレム睡眠をしっかり確保することが大切だということは、どこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ところが、お酒は深い眠りのレム睡眠を妨げ、全体的に眠りを浅くしてしまいます。
特に睡眠の後半の眠りの質が顕著に低下していきます。(参考:健康づくりの為の睡眠指針2014)
飲酒した翌日は、なぜか早くに目が覚めるという経験則を持っている人もいるのでは?
体も頭も十分休まらないため、頭が重く肩こりもひどい「寝起き最悪」な朝を迎えてしまうというわけなのです。
一見気持ちよさそうに寝ているようだが、体内では目まぐるしい変化が起こっている。
寝酒は耐性が付くと少量では眠れなくなり、徐々に量が増える原因になりかねません。
アルコールの量が増えるとますます眠りが浅くなり、睡眠不足が蓄積してしまいます。
蓄積した睡眠不足は、回復までに時間がかかり、重たい肩こりがずっと続く原因になることも。
「お酒でぐっすり」どころか、寝酒の習慣が翌朝の肩こりやだるさを引き起こしていたのです。
二日酔いの肩こりは脱水と炎症物質が引き起こす
二日酔いの典型的な症状はのどがカラカラ、頭が重い、肩こり、胃のむかつき、そして気力が出ないといったもの。
そもそも、こうした体調の異変はどのようにして引き起こされているのでしょうか。
同じように飲んでも、二日酔いの症状が軽いこともあれば、起き上がれないほどつらい日も。
お酒の種類によって、症状の出方が違うというまことしやかな話もありますが……。
二日酔いの原因は明らかに飲みすぎということですが、さまざまな体調不良が生じる仕組みはいくつもの物質が複雑に絡み合い、まだ良くわかっていないことも多いようです。
その中で、二日酔いを引き起こす可能性が高いと考えられているものには次のようなものがあります。
酩酊状態から二日酔いの状態になるまでに、さまざまなホルモンのバランスが変化するようです。
たとえば、尿の量を抑える「抗利尿ホルモン」が低下します。
また、血糖値をコントロールするインスリンの分泌量も変化します。
このようなホルモンバランスが変化することで生じる脱水や低血糖状態から、体のだるさや頭痛などさまざまな不調が引き起こされると考えられています。
さらに、二日酔い状態の時には、痛みを引き起こす炎症物質(サイトカイン)の量が増加するという報告があります。
発痛物質が増加することで、普段は感じないようなわずかな痛みが増幅され、肩こりや関節痛といった体の痛みがよりはっきり感じられるようになることが考えられます。
また、高いアルコール濃度のお酒を飲むと、胃腸が荒れてしまうことがあります。
このような内臓のダメージも二日酔いに影響を与えています。
そのほか、酒の風味によって二日酔いのなりやすさには違いがあるようです。
お酒の風味は含まれるメタノールやエステルなどの不純物によって異なります。
こうした不純物の中には、アルコールよりも分解しづらいものがあるため、不純物が多いお酒(風味の強いお酒)は二日酔いしやすいとかんがえることができます。
二日酔いのメカニズム
〇利尿作用により、必要以上に排水してしまい脱水に陥る
〇インスリンが低下し、低血糖状態に陥る
〇炎症物質が過剰生産され、頭痛や肩こりを引き起こす
〇高いアルコール濃度のお酒が胃の粘液を傷つける
〇特定の酒に含まれるメタノールは分解に時間がかかるため、二日酔いをより悪化させる
※参考:厚生労働省情報提供サイトe-ヘルスネット「二日酔いのメカニズム」)
二日酔い対策は飲んでいる最中に
つらい二日酔いを予防するためにはどうすれば?
飲まなければいい、とばっさり切り捨てるのはあまりに乱暴。
飲む前に、そして飲んでいる最中に予防線を張っておくのが最も効果的な方法です。
先にも紹介したように、二日酔いを引き起こしているのは脱水と低糖質状態、そして炎症物質です。
お酒を飲む前に水を飲んでおくと血中アルコール濃度を抑えることにもつながり効果的。
一方、低血糖を解消するには炭水化物を摂取するのが一番。
「〆のラーメン」が食べたくなるのは、この低血糖を解消しようとするささやかな体のサインだったというわけです。
といっても、翌日の胃のむかつきの原因はアルコールによって胃粘液が傷つけられていることなので、宴会中に補ってしまおうと暴食するのは逆効果。
やっぱりお酒の量をほどほどに減らすのが最適解だというのは動かしがたい真実なのです。
せめて、分解の遅い不純物(メタノールやエステル)を多く含んだワインやブランデーの量は減らすように心がけましょう。
二日酔いの予防線
〇飲む量を決めておく
お酒の許容量は、アルコールやアセトアルデヒドの分解能力によって、一人ひとり決まっています。遺伝的な要素が大きく、無理に飲んだり飲ませたりなんてことは絶対にダメ!
初めから今日はグラス2杯までなどと、お酒の量は決めておきましょう。
また、不純物の多いブランデー、赤ワイン、ラムは分解に時間がかかり、悪酔いを招く元凶に。風味が強いお酒は、特に量の管理を徹底する必要があります。
〇こまめな水分補給
アルコールによる脱水を予防するために、お酒を飲む前、飲んでいる最中、飲んだ後にこまめにノンアルコールの水分を摂取するように心がけましょう。
アルコールと同時に水を飲むことで、アルコールの吸収を穏やかに抑え、体への負担を減らすこともできます。
また、まさか泥酔状態でサウナや風呂に入ろうと考える人は少ないかと思いますが、こうした行為は脱水を悪化させるだけ。血圧が急に高まって嘔吐してしまうこともあります。翌朝までは入浴を控えたほうがいいでしょう。
〇アルコール分解を助ける食べ物を食べる
二日酔いには「シジミの味噌汁」とよく言われていますが、これはシジミにはアセトアルデヒドの分解を助けるタウリンが多く含まれているため。
他にもアルコールの吸収を穏やかにする柿、胆汁の分泌を促すウコン、アセトアルデヒドの分解を助けるゴマセサミンなどを食べるといいでしょう。
特にゴマは酒の肴にプラスしやすい食材。宴会の場で積極的に食べてみてはいかがでしょうか。
二日酔いになってしまったら
お酒を飲めば必ずアルコールが吸収されるので、しっかり対策をしていても、二日酔いになるときはなってしまうもの。
のどがカラカラ、胃が重い、重りを乗せているかのように肩がこっている、おまけに気力が弱ってなにかと弱気に。
これらが脱水・低血糖・胃の荒れによる典型的な二日酔いの症状。
飲みすぎた過去をなかったことにはできませんが、上手に対応すれば疲労感や肩こりの症状を早期に改善することができます。
まずは脱水を解消するために必ず水を飲むようにしましょう。
前日のアルコールで胃の粘液にはダメージが蓄積しています。常温のミネラルウォーターやスポーツドリンクが最もいいでしょう。
二日酔いの2つ目の原因は低糖質。
アセトアルデヒドの分解を最優先にしたために、肝臓の糖新生が後回しにされてしまった結果です。
個人差はありますがアセトアルデヒドの分解は早く、翌日には全て分解されています。
炭水化物を食べて、血糖値を回復させると体力・気力の回復が早まります。
痛みを抑える鎮痛剤も聞くことがありますが、胃が荒れている場合には胃の負担になってしまうため、いろいろ試してからの切り札として考えておきましょう。
〇水分補給で脱水を解消
〇糖質補給で低血糖を解消
〇お風呂やストレッチで血行をよくする
飲みすぎは肩こりどころでは済まない
二日酔いになるのは、肝臓が弱っているか、お酒の許容量が超えている証拠。
頭が痛い飲み、肩こりがひどくなるのも、「お酒の飲み方を見直して!」という体からのサイン。
1度や2度ならいざ知らず、お酒を日常的に飲みすぎるとさまざまな生活習慣病のリスクを高めることはご承知の通り。
お酒はほどほどに。
酒はちびちび飲むのが乙。あくまで適量を守って健康的に楽しみましょう。