まもなくゴールデンウィーク。
いくつかある大型連休の中でも、寒くもなく暑くもなく(最近は暑すぎる傾向がありますが)一番運動に適した気候とあって、大勢の人がスポーツに挑戦しようという心積もりをしているかもしれませんね。
普段は運動習慣がない人でもこのような機会に身体を動かすことは喜ばしいことですが、急に全力で運動を始めることは大変危険です。
はやる気持ちをおさえて準備運動から始めましょう。
健康目的のはずが…。急な運動は逆効果?
スポーツの前に行う準備運動は、あまり見た目がよくないと思われているのか、それとも面倒くさいのか、真剣に取り組もうとしない人をよく見かけます。
しかもよく見ると、普段は運動の習慣がなく、久しぶりにスポーツをするという人ほどいきなり全力で動こうとしているように感じます。
しかし、突然激しい運動を始めることは大変危険です。
筋肉のけいれんやねんざといったスポーツ障害を招きやすいことはいうまでもありません。
しかも、筋肉量は20代をピークに減少し、神経と筋肉の反応速度も加齢とともに変化していくため、運動不足の人が“昔取った杵柄”と若いころのような動きをしようとしても身体がついていきません。
転倒して骨折という事故が多いのも、大型連休に見られる特徴です。
車の運転にたとえるなら、長年放置していた自動車をメンテナンスや慣らし運転することなくフルスピードで走らせようとしているようなもの。
各部品に負担がかかる上、予期せぬ大事故にもつながりかねません。
人間の身体の場合、メンテナンスや慣らし運転に相当するのが、準備運動というわけです。
誰もが知っているように、スポーツを安全に、そしてよりよいコンディションで行うためには、これからの運動に備えたウォーミングアップが欠かせません。
ウォーミングアップの効果には、
(1)筋肉や関節の動きを滑らかにして運動中のケガを予防する
(2)体温を高めて体を活発にし、酸素と二酸化炭素の交換を速やかにする
(3)気持ちを切り替えてスポーツへの集中力を高める
などが挙げられます。
また、準備運動は他のスポーツに比べると運動量が少なく、準備運動からはじめてもケガをするリスクが低いことも大きなメリットだといえます。
面倒くさがらずに十分行いたいものです。
準備運動は寒いときほど念入りに行う時間をかける必要がありますが、一般的には10分から15分間ぐらいかけることが望ましいでしょう。
屈伸運度や背伸びの運動、手首足首の回旋運動を中心に、大きくゆったりした動きで筋肉や関節をほぐします。
準備運動にストレッチは必要?それとも不必要?
ところで、準備運動の中でストレッチをしてもいいのでしょうか、ということが気になっている人も大勢いるかもしれません。
というのも、最近ではストレッチ、とくに“静的ストレッチ”の効果に異論を唱える話題が増えているようです。
静的ストレッチというのは、静止した状態で筋肉をしばらく伸ばし続けるストレッチ法のことで、学校で習う最も一般的な方法です。
アキレス腱を伸ばしたまま「1、2、3・・・」と数えていくようなものはたいてい静的ストレッチだと思ってもらって構いません。
しかし、運動前に静的ストレッチをすることで垂直とびや短距離走のパフォーマンスが上がるどころか低下したという結果が多く報告されています。
これは静的ストレッチによって筋肉の張力が減少した結果、最大筋力が低下したためだと考えられています。
また、ストレッチをしてもしなくても、肉離れや腱炎の発生率に差は見られなかったという報告もあります。
もっとも、だからといって必ずしも静的ストレッチが不要だとは言いきれません。関節の可動域を広げておくことはスポーツを安全に楽しむ上で効果を発揮すると考えられます。
とくにねんざのような関節障害では、関節の可動域が狭いほど大幅にリスクが高まることが報告されています。また、運動後の筋肉痛を軽減させる効果も期待できそうです。
いずれにしろ、ストレッチの効果にはまだまだわかっていない点も多く研究途上です。
従って、一切を止めてしまうのではなく、関節の柔軟性を確保するという目的を持って行うのがよさそうです。
また、最大筋力の低下は90秒以上のストレッチで顕著という結果になっているので、30秒程度までに留めておくというのも考えられる方策です。
疲れを残さない運動量とは?
普段運動できない分、大型連休の間に“運動溜め”をしようと考えている人がいるかどうかはわかりませんが、ゴールデンウィーク明けに疲労を残さないためには、1週間の間に5日以内とし、間に休息日を挟むようにすることが望ましいでしょう。
1日の中でも連続で運動するのは1時間までとし、それ以上続けるのなら一旦休憩を挟みたいものです。
さらに運動後には必ず整理運動(クーリングダウン)を行いましょう。
運動後に軽い運動を続けることで、疲労の原因物質の除去が早いことが確かめられています。
ゴールデンウィークは25度以上の「夏日」になることも珍しくありません。
この時期、身体がまだ暑さに慣れていないため、体温調節が上手くいかず熱中症のリスクが高まります。
めまいや頭痛、身体のほてりを感じたら日陰で休憩し、十分な水分補給をしてください。適度な運動を楽しんで、健康的な大型連休を送りましょう。